庄内クリニックブログ Shonai Blog

ゴッホ

「巨匠の絵画」とかけまして、「アリバイ」と解きます。その心は?

どちらも、照明(証明)が難しいでしょう

 

こんにちは、美術部の佐野です

白川公園の名古屋市美術館にゴッホが来てます。先週、午前と午後の診察の間に観て来ました。平日だったので当日チケットでも並ばずに余裕で入館できましたが、館内が混み合ってましたのが少し残念でした。名古屋で多数のゴッホの絵が観られるので混んでて当たり前なのですが、好きな角度と距離で鑑賞するということがほぼ不可能だったんです

これまで、国内海外問わずいくつかの美術館で絵画鑑賞して来ましたが、今回が2番目に混雑していました。最も混んでいたのは小学生の頃に住んでいた大阪にゴッホ(だったかな?)が来たとき。「教科書でみた!」などの予備知識もなかったため、本当につまらなかったです。その点、海外のはツアーで仕方なく訪れたところでも意外と空いててしっかり楽しめました。教科書でみたような絵画がガラガラとは言えなくとも好きな角度と距離から存分に鑑賞できるのは満足度高かったです。私が海外旅行を楽しんでいたのは10年以上前なので、中国人富裕層が増えまくった最近のことは知りません。ミラノにある「最後の晩餐」は4時間待ちと言われて諦めましたが。長時間並ばされても展示室はそれほど混んではいないと聞いたことがあります。

10年以上前というと医者として若手で海外旅行なんて行ってられるの?と思われたかもしれませんが、当時は土日も休まず働いてましたので、年に1回しっかり2週間の夏休みをもらってました。偉い先生から順番に休みを取るので若手は秋とか冬に夏休みを取ることになって、海外旅行も安かったり。逆に海外にでも行っておかないと自分の専門分野の患者さんが運ばれて来たら呼ばれてしまうので、特に救命救急センター勤務の時は皆さん海外や国内でも遠方へ出かけてました。

さて、混雑ともう一つ気になったのが照明です。薄暗い展示室に上からLEDライトで作品が照らされているのですが、私には不自然に感じてしまいました。絵画の損傷を防ぐためにも紫外線や赤外線がしっかりカットされてるLED照明がふさわしいのはわかりますが、どうも私はLED照明が好きになれません。自動車のヘッドライトも「虫が寄りつきにくい」ということでLEDライトに交換したこともありますが、ダメでした。CDが世に広まって世の中のオーディオ環境がデジタル化される時に高音質化されはしましたが、ヒトには聴き取れない高音域が大幅にカットされてます。私自身はそれは全く気になりませんが、アナログ音源にこだわる人たちの中には、デジタル音源の不自然さが我慢ならない人もいるようです。それと同質かはわかりませんがある種の違和感をLED照明に感じてしまうのです。自宅の照明もリビングなどは妻の意向もありLEDになってますが、自分だけの部屋やトイレは蛍光灯や白熱灯が好きです。せめて色調だけでも電球色にしたいのですが、妻が(以下自粛)。あと、油彩画だと絵の具を盛りあげて描かれているものが多いのですが、その凸凹の一つ一つに照明の反射がチラチラ見えてしまうのも気になりました。

と書きながらも、今回の見学で良いこともありました。これまで、絵画というと「いかに写実的であるか」「有名であるか」以外にあまり関心がありませんでした。特に写実的でない描き方をあえてしてしまう巨匠たちの意図が全く理解出来ませんでした。しかし、今回のゴッホ展では「なるほど、こういう描き方もあるのか」「風景、建物、人物、植物などが目には写真のように写っていても、頭の中ではこのように変換されてしまうこともあるかもしれんなあ」と、巨匠達の意図とは違うかもしれないけど、46歳にもなって感じることが出来たこと。これまで全く興味のなかった印象派と呼ばれる他の巨匠達の絵画も気になってきました。これまで教養でしかなかった絵画の世界が「もしかしたら自分にも感性の部分で楽しめるかもしれない」と思わせてくれたのは大きな収穫でした。思わずネット通販で油彩画スターターキットを買いそうになってしまいましたよ。妻に全力で止められましたけどね。よく出来た妻で、私が何か始めようとするといつも止めてくれます。

これまで漫画「ドカベン」全巻(母親)、「北斗の拳」全巻(母親と妻)、「あしたのジョー」全巻(母親と妻)、「湾岸ミッドナイト」全巻(妻)、大藪春彦の文庫本70冊以上(妻)、アナログレコード200枚以上(妻)、「宗像教授異考録」全巻(かどうか不明だが多数) (義母)と身内の女性達に何度も捨てられてきました。女性とはなんと男の人生を貧相にしてくれる存在なのでしょう。

また脱線しましたが、今回の気づきや絵画鑑賞の考え方に影響を及ぼしてくれた書籍がありますので挙げておきますね。原田マハの「たゆたえども沈まず」です。ゴッホとその弟、当時パリにいた日本人二人(うち一人は架空)を中心に展開していく美術史実をもとにしたフィクションです。先月「最近読んでる本があるんだけど、全然進まないのよ」とある女性から聞きました。彼女は元国語教師のバリバリ読書家なのになんで?と興味が出たので買ってみたら私には当たりだったようで苦しくなく読めてしまいました。普段私は活字が重くて重くてほとんど読めません。「進撃の巨人」も活字どころか漫画も無理でアニメでやっと。でも、この本はスマホをいじる代わりに食事やコーヒーの時間にスッと読めてしまいました。高校生の時に読み漁った大藪春彦文学以来です。「自動車」「バイク」「銃器」「狩猟」「暴力」「犯罪」「エロス」満載で中二病こじらせ男子高校生にはカレーライスみたいなものだったんですけどね。さらに余談ですが松田優作主演で映画化された「野獣死すべし」の小説の中の一節を覚えてます。ネットからコピペじゃないですよ。世間の大学生だか、主人公伊達邦彦周囲の大学生だかをさして「愚にもつかぬ講義を必死でノートにとり、試験の成績に一喜一憂する愚かな飼いネズミども」と表現してます。どうです?中二病が喜びそうな表現でしょう?

で、

映画「野獣死すべし」でヒロイン役の小林麻美様はゾクゾクくるほどの美女で理想の女性像を聞かれるとアニメキャラでは「メーテル」なのですが、女優さんでは断然「小林麻美様」です。この辺については、別の機会に書きますね。

というわけで「たゆたえども沈まず」を読んでタイムリーなゴッホ展に行きたくなったのでした。人生を貧相にしてくれる女性もいれば、豊かにしてくれる女性もいるんですね。あ、彼女はそういうのではないですよ。人妻ですから。「人生を豊かにしてくれる女性」というワードでそっちの誤解を警戒してしまう私の発想が貧相なのかもしれません。この本は少しページ多めですがゴッホの苦悩を想うときの助けになりますし、何よりゴッホの滞在地ごとにそれぞれどのような作風で、兄弟関係がどのようであったか、などなどスッと頭に入って来ますのでゴッホ展に行かれる方は先に読んでみてはどうでしょう。また、この小説を読もうと思った方は、読むと鑑賞したくなるので、ゴッホ展の期間中に読むことをお勧めします。