まあ、そうだよね。気持ちはわかる。
こんにちは、院長の佐野です
今回は最近思っていることを
数年前から巷間騒がれているGLP１作動薬について。
ダイエットに使える、とのことで銀座あたりの美容系クリニックでは２カ月コース３０万円！くらいの自費で肥満治療にも使われているお薬です。本来は糖尿病治療薬なのですが、副作用で痩せる効果があります。簡単に仕組みを説明しておきますと、GLP-1というホルモンは膵臓に働きかけてインスリン分泌を増加させます。インスリンは血糖値を下げるホルモンです。このGLP-1は消化管にも作用して消化管の動きを抑制し、食欲を抑制します。この働きが減量につながるとして近年持て囃されているわけです。DPP-4阻害薬という薬も10年ほど前から登場していて多くの患者さんに使用されていますが、作用機序の観点からGLP-1作動薬を開始するときにはDPP-4阻害薬を終了することになります。
さて、本題
糖尿病患者さんの治療で特に肥満がある患者さんにはこのGLP-1作動薬を積極的に使っていきたいのですが。意外にもなかなか導入出来ておりません。既に書いたようにDPP-4阻害薬は中止になるので経済的な負担増はそれ程大きくはないと思います。では何故か？
「坊やだからさ」
脱線せずにいられない性格ですみません。わからない人は無視してください
医師として、治療薬処方の段階で副作用のうち重篤なものと頻度の高いものについては説明しておくべきであるということに関してはほぼ異論ないところだと思います。開始したいときに「消化管の動きを抑制する作用があり、最初は気持ち悪いかもしれません」その結果「食欲が抑えられます」さらにその結果「痩せます」という説明をします。読者の皆さんの多くは「いいじゃない！」と思うかもしれません。しかし、糖尿病でさらに肥満が解消できていない患者さんの多くは「気持ち悪くなるかもしれない」「食欲が抑えられる」の部分が受け入れられないようです。
食べることが無上の喜びとなっている患者さんにとっては受け入れがたい副作用なのかもしれません。診察室では「食事療法や運動療法頑張ってますか？」「体重は落ちましたか？」と聞きますが、「いやあ、頑張ってるんだけどね」「ぜんぜん食べてないのに、不思議と痩せないんだよね」などなど皆さんおっしゃいます。しかし本音のところは「食べる喜びも確保しつつ糖尿病の治療をして行きたい」のではないかと思います。
気持ちはすごくわかります。
高速道路に移動式オービスというものが出てきたので趣味のドライブも楽しめなくなってきました。昭和40年代の360ccの軽自動車なら思い切り走っても速度超過しにくいのではないかと本気で考えてます。結婚して、子育てもあり、私にとっても「食べることが無上の喜び」なんです。
そして、医者の前で「頑張ってます」「全然食べてない」と言いたくなるのもわかります。でも、そこは隠さないで欲しいんですよね。それならそれでできる話や指導もあると思うので。もし読者の中に当てはまる患者さんがいれば正直に教えてください。そこを隠しての受診は治療効果も上がりにくくなる可能性もあります。さらには気が重くなり受診自体がいやになってしまうかもしれません。
あと、糖尿病があることに対して罪悪感を持っておられる患者さんもいらっしゃいます。しかし、Ⅱ型糖尿病に関して言えば、ほぼ遺伝的要因です。生活習慣病と言われて久しいですが、ほぼほぼ持って生まれ持った体質によります。自力で糖尿病を発症することができるとしたら、極端な食生活とそれに引き続く肥満ですが、それらがないにも関わらず合理的でない罪悪感を抱いてしまうのは日本人の悪いクセです。発症してしまったのは仕方のないことですので、そこは受け入れてご自身で出来ることを一緒に考えて行きましょう。
なんか、真面目な医者のブログみたいな締めになってしまいました
次回を期待してください
